KPIツリー

デザインKPIツリー 2

Mikihiro Fujii
19 min readJul 4, 2022

− 後編:作り方と使い方 −

(この記事は以前から公開していた記事がmediumによってnoindexになっていたのでリンク削除や記事分割したものです。内容は以前のままです。)

4. デザインKPIツリーを使ったデザインの捉え方

前編:デザインと事業の定量的共通言語」でデザインKPIツリーがどのようなものかわかったところで、あらためてその視点と作成方法の詳細について説明します。

4–1. デザインにKPIツリーを使う理由

4–1–1. 事業を成立させるデザインの捉え方がわかる

事業に携わるデザイナーの役割は、

  1. デザインを世に送り出し、
  2. 使ってもらいたい人に使われ、
  3. 体験を設計して価値を提供し、
  4. 事業としても成立する

ことである、と言うことができます。

近年、ビジネスにデザイン・デザイナーが必要であるという文脈がありますが、そこで理想とされるのは、1〜4すべてを計画的に実現できるデザイナーです。言い換えると、4つのパートを実現してはじめて事業に必要なデザインができるということです。 もちろん、いずれかのパートに特化したデザイナーも成立しますが、特にインハウスデザイナーは総合力を求められるようになってきています。

そして、「事業としても成立する」は、4つのパートの中でもデザイナーにとって苦手意識を持ちやすい傾向があると思います。

僕自身、数字については(本当に!)苦手分野ですが、わかっていないと最適なデザインを提案できないので、工夫をしながら取り組んでおり、その工夫の1つとしてビジュアルに理解できるデザインKPIツリーがあるということです。

4–1-.2. 事業ゴールを分解して理解できる

事業の中でデザインする際に、ビジネス側からなんらかの定量的な目標=KGIを提示されることも多いと思います。(もし提示されないのであれば要求するか、デザイン側だけでも設定することをおすすめします。)

例えばそれが

月間新規登録者数20,000人

だとしましょう。

でも、このままではデザイナーとしてどう向き合えば良いのか、自分が依頼された登録フロー最終ページの登録ボタン(押せば登録完了!)を押してもらうための施策がどんな役割を担っているのか、漠然とした捉え方しかできないと思います。

では、このKPIツリーを見るとどうでしょう?

目標:月間新規登録者数20,000人現状:月間新規登録者数10,000人

├ 登録フロー最終ページ 登録ボタンクリック率 25%
└ 登録フロー最終ページユニークユーザー数 40,000(平均)

ここから先に読み進める前に、自分の担当案件だったとして、このツリーから何が読み取れるか考えてみてください。(僕と同じく数字に弱い人も挫けないで欲しいところです。)

・・・

どうだったでしょうか?

ここでは、最低限

  1. 現状は目標に対して二分の一の登録者数
  2. 最終ページのユニークユーザー数が平均のままとしたら、ボタンのクリック率を2倍の50%(2人に1人!)にする必要がある
  3. ボタンだけのデザイン改善では、かなり難しいお題

ということが分かれば良いです。

そして、さらに

4. 最終ページまで来ているのに3/4が脱落しているのは、なんらかの致命的な問題があるはず。

までたどり着ければ理想的です。

このように、ゴール(KGI)を分解してデザインの役割や規模感を抽出するためのツールがデザインKPIツリーなのです。

4–1–3. 定量的な視点でデザインの役割を捉えられる

KPIツリー上に登場するデザイン指標は、一般的なKPIツリーのような自由度を抑え、デザインにフォーカスするために、

ユーザー → 行動 → 結果

という流れを持った3種類になります。

ユーザー
目的と感情を持った利用者です。UU、MAU、WAU、DAU、PU、登録ユーザー(会員数)、セッションなど多くの指標が対象になります。

行動
サービス上でのユーザーのアクションです。対象の指標は、CTRやCVRなどの比率が当てはまります。また、ユーザーの選択という意味で、特定の商品の単価や顧客単価なども「行動」として考えます。(e.g. 1500円の買い物をした。)

結果
行動の結果となる実数です。指標としては売上や営業利益などだけでなく、「ユーザー」と同じUUなどの指標も結果になります。(これも詳しくは後ほど)

【主な指標の意味】・UU(Unique Users/ユニークユーザー数):ある期間中に行動を何回しても、1人としてカウントしたユーザ数。(例:期間中3回購入があったが、調べたところ同一人物なのでユニークユーザー数は1。)・MAU(Monthly Active Users/月間アクティブユーザー):多くの場合月間UUと同じ意味。・WAU(Weekly Active Users/週間アクティブユーザー):多くの場合週間UUと同じ意味。・DAU(Daily Active Users):多くの場合日次UUと同じ意味。・アクティブユーザー:Google AnalyticsなどではUUと同じ意味で使われるが、「アクティブ」をどう定義するかによって変わることもある。・PU (Paid User/課金ユーザー):ARPPU(Average Revenue Per Paid User/課金ユーザーの平均単価などで使われる。・CTR --(Click Through Rate/クリック率):あるUIを表示したユーザーの内、ターゲットとなるボタンやリンクをクリック(タップ)して遷移などをした率。・CVR(ConVersion Rate/転換率):新規来訪者が登録者に「転換」したり、閲覧者が購入者に「転換」する率。

デザインの役割はこの流れの要素の間をつなぐことです。

特に「定量的な事業成果」という意味では、

ユーザー → 行動の理由(デザイン) → 行動 → 結果

という図式が成立するように、デザイナーは「ユーザー」と「行動」の間をつなぐ「ユーザーが行動する理由」をつくることになります。

つまり、デザインKPIツリーの視点でのデザインは、

  1. 行動の理由になるユーザーの内面や文脈を探り、知りえないことは仮説を立てる。
  2. 行動の理由になる事物の仮説を立て、UIを作る。

という2つの行為を指します。

色んなケースに合うように書いているので小難しく感じるかもしれませんが、例えば、

  1. どんなユーザーで、ユーザーにとってデザイン対象がどんなものなのかを想像する。
  2. クリックなど、して欲しい行動をしてもらうためには何があればが良いかを考え、制作する。

という当たり前のことでしかありません。

4–1–4. 定量的にすることでイメージが明確になる

デザインKPIツリーによって定量的にすることで、イメージをより明確にすることができます。

まず、コミュニケーションの共通言語になること。

定義さえ違わなければ、KPIは事業とユーザーどちらの側から見ても同じです。

チームのデザイナーだけではなく、事業責任者も営業もエンジニアも同じ指標と値を共有することになります。CTRはユーザーと事業どちらから見ても同じです。

「もっと魅力を感じるバナーを作ってもらえますか?」より、「CTRが上がるバナーを作ってもらえますか?現状30%で35%を目標にしています。」の方が誤解が少ないコミュニケーションができます。

もう一つは、デザインの規模のイメージが明確になることです。「現状30%で35%を目標にしています。」と「現状30%で60%を目標にしています。」だと、前者は細かな問題点潰しや改善を組み合わせて達成できそうですが、後者は大きな問題点に取り組んで改修するイメージを持つことができます。

4–2. デザインKPIツリーの分解方法

KPIツリーはKGIからKPIに分解してツリー状にしたものですが、デザインでの分解の方法を説明するにあたり、まずは一般的なKPIツリーの話から説明します。

4–2–1. 一般的な分解方法

KGIを分解してKPIツリーを作成する時、その分解の方法は1つではありません。

例えば、KGIを売上とすると、

A. 売上にフォーカスを当てて取り組む場合

売上
├ 既存ユーザー売上
│ ├ 既存ユーザー数
│ ├ 既存ユーザー購入率
│ └ 既存ユーザー単価

└ 新規ユーザー売上
├ 新規ユーザー数
├ 新規ユーザー購入率
└ 新規ユーザー単価

B. 購入ユーザー数にフォーカスを当てて取り組む場合

売上
├ 購入ユーザー数
│ ├ 既存購入ユーザー数
│ │ ├ 既存ユーザー数
│ │ └ 既存ユーザー購入率
│ │
│ └ 新規購入ユーザー数
│ ├ 新規ユーザー数
│ └ 新規ユーザー購入率

└ 購入ユーザー単価

のように違う方法でツリーを作ることができます。(これ以外にも方法はあります。)

KGI達成の方法として、どこにフォーカスを当てているかによって分解の方法が変わるのです。

さて、指標は数字ですから、具体的に指標を分解するには指標が答えになる計算式を探ります。

例えば、Aのツリーの場合は、

A:既存ユーザー売上 + 新規ユーザー売上 = 売上(KGI)

で、「既存ユーザーの売上と新規ユーザーの売上で合わせていくらか」で全体の売上を出す

Bのツリーの場合は、

B:購入ユーザー × 購入ユーザー単価 = 売上(KGI)

で、「購入者が平均いくら買ったか」で全体の売上を出し、

ということになります。

他にも、

C:ユニークユーザー数 × 購入率 × 購入ユーザー単価 = 売上(KGI)

で、「全ユニークユーザーが何人で、その内何人が買って、平均いくら買ったか」で全体の売上を出す、

なども考えられます。

当然ですが、答えは同じでも、式はこれ以外のものも含めていろいろな選択肢があることがわかると思います。

では、どうやって分けるのが正解なのかというと、それは事業としての捉え方によります。

KPIはその名の通り、事業成果のKeyになる指標なので、どんな戦略で何を重要視しているかによって自由に変わります。

実際、KPIの設定で失敗することもよくあるので、ネットで何をKPIとしたら良いかを教える記事があるほどです。

※ 実際には式で繋がらないツリーをつくることもありますが、その場合、ある指標の目標を達成したら全体も達成すると思ってがんばって達成したけど、実際は全体は未達に終わった・・ということもありえます。確実に結果になる式と因果関係があると考えて取り組む仮説は分けて可視化することをおすすめします。

4–2–2. デザイン視点での分解方法

デザイン視点でのツリーをつくるにあって、まずはデザインKGIをツリーごとに設定しましょう。サービス単位だけではなく、施策単位のこともあると思います。

この時、組織によっては「KGIは事業全体のもののみ」というルールや慣例の場合もあるので、用語を揃える必要があれば変えてしまっても問題ありません。

デザインKGIが設定できたら、分解していきます。

KPIツリーのデザイン指標

ユーザー → 行動 → 結果

を前項のように、式として理解するのであれば、

ユーザー × 行動 = 結果

ということになります。

デザインの役割は、この式の「×」の部分である「ユーザーが行動する理由」をつくることです。

また、デザインが掛け算であるのは、足し算ではデザインでは直接取り組むイメージが持ちにくいからです。

では、前項の3つの式をデザインの視点で見てみましょう。

A:既存ユーザー売上 + 新規ユーザー売上 = 売上(KGI)

これが足し算の例です。デザインの視点で見ようとしても、ユーザーにあたる指標が無く、「既存ユーザーと新規ユーザーの売上を合わせていくらか」でしかないので、どうやってアプローチするのかこれだけではわかりません。

B:購入ユーザー × 購入ユーザー単価 = 売上(KGI)

購入ユーザーを「ユーザー」、購入ユーザー単価を「行動」と考えると、 「購入ユーザーの購入単価をデザインによって上げる。」と捉えられます。 単価をあげることにフォーカスしているのは良いのですが、これだけでは購入するかどうかは無視することになります。

C:ユニークユーザー数 × 購入率 × 購入ユーザー単価 = 売上(KGI)

ユニークユーザー数を「ユーザー」、購入率と購入ユーザー単価を「行動」と考えると、 「ユニークユーザーの購入率と購入ユーザー単価をデザインによって今以上にする。」と捉えられます。購入率を保ったまま単価を上げたり、逆に単価はそのままで購入率を上げることもありますが、それは目標数値で表現します。

このように、ABCの中では「行動」を明確にしたCが最もデザイナーの役割がわかりやすくなります。

ただし、このままで新規ユーザーと既存ユーザーを合計してしまうなどの問題はありますし、購入の前にカートに入れたり決済したりといったフローの各ステップ通過率もあります。さらに、新規には登録フローも入るのでそこは分けて考えた方が良いでしょう。

このような複雑な分岐を1つの式に収めると複雑になるので、ツリーという形式で可視化するということになります。

例えば、サービス全体としては、

売上

├ 既存ユーザー売上
│ ├ 既存ユーザー数
│ │ ├ 前月ユーザー数
│ │ └ 継続利用率
│ ├ 既存ユーザー購入率(購入フローは別途ツリー作成)
│ └ 既存ユーザー単価

└ 新規ユーザー売上
├ 新規ユーザー数
├ 新規ユーザー登録率(登録フローは別途ツリー作成)
├ 新規登録ユーザー購入率(購入フローは別途ツリー作成)
└ 新規登録ユーザー単価

のようにまとめます。

登録フローなどは別途切り出して

新規ユーザー登録率

├ 登録フロー ステップ1通過率
├ 登録フロー ステップ2通過率
├ 登録フロー ステップ3通過率
└ 登録フロー 最終ステップ通過率

のようにしておけば、施策を捉えやすくなると思いますし、全体のツリーもシンプルに保つことができると思います。

このように、事業成果の指標を制作対象のレベルまで分解して、全体の流れの中で把握するというのが、デザインKPIツリーの主な使い方の1つです。基本的な考え方さえわかってしまえば、実は構造自体は単純とも言えるものですし、計算も小学生レベルなので数字が苦手な人もやってみればできるようになると思います。

4–2–3. KPI設定の注意点

  1. ユーザーの主観は計測できない。(例:記事を読み終わったかどうかはユーザーの主観なので、数値化することはできない。)
  2. 指標の単位は、ユーザ数やユーザーの行動の比率などで設定する。(例:平均滞在時間30秒を目標にして、結果30秒という数字が出たとしてもKPIツリーの式につなげることができない。30秒以上のユーザーと29秒以下のユーザーとして捉えるとつなげることができる。)
  3. Google Analyticsでユーザー単位で取得できない値もある。
  4. デザインKPIツリーに直接繋がらない指標は「サブKPIs」として別に管理しますが、これについては別の機会に説明します。

4–3. デザインKPIツリーとその他の視点

デザインKPIツリーの考え方について迷いそうなところをまとめました。

4–3–1. 価値提供とデザインKPIツリー

行動の結果である価値体験につなげるデザインは扱わないということを書きましたが、それは体験を無視するということではなく、ユーザーと事業のインタラクションのコインをユーザー面から捉えることはしないという意味です。

同じコインですから、事業成果という視点からも見ていても、当然のように価値体験を捉えていることになります。

例えば、事業上重要な継続ユーザー数は「既存ユーザー×継続利用率」という式で算出されますが、継続利用率はユーザーにとって価値があることを定量的に評価するために使われる方法でもあります。

事業とユーザー2つの視点がどちらも必要という前提で、それぞれのKPIの意味を両側から捉えることがデザイナーに求められるわけで、難しい話のように見えるかもしれません。でも、言い換えると「ユーザーにとって魅力的で、事業にも貢献するようにデザインする」ということでしかありません。

デザインKPIツリーを使うことで、漠然と取り組むのではなく、ユーザーと行動と結果の関係性をしっかり把握し、チーム全体で共通言語を持って、より効果的にデザインできるようにしていきましょう。

4–3–2. 事業のKPIツリーとデザインKPIツリー

「デザインKPIツリーとは?」の項目で簡単に触れましたが、事業側でしっかりとしたKPIツリーがつくられている場合、衝突や混乱が起こることがあります。

デザインKPIツリーと事業側のKPIツリーの分解の仕方が違っていても、どちらかを修正する必要はありません。単に視点が違うだけだからです。ツリーが違っていても、KGIが同じであれば事業的にも問題はありません。別々に管理しましょう。

問題は、KGIに広告などの影響が考えられる場合です。当然ですが、広告にコストを投下すればするほどユーザーは増えて行動は減ります。よくある話なので、事前にわかっている場合は、KGIの数値をオーガニック検索のユーザーのみに絞った指標もつくるなど、可能な限り影響を除外することをお勧めします。(方法がわからなければ、解析ツールの管理者に相談しましょう。)

5. 分解の基本パターン

指標の分解は難しいようで慣れれば数学のような難解さはありません。まずは基本パターンを覚えて徐々に自分でできるようになっていきましょう。

5–1. ユニークユーザー数の分解

ある期間のユニークユーザー数(MAUなど)がKPIになっていることは多く、ユニークユーザー数にユーザー単価(1ユーザーあたりの売上)を掛けると全体の売上になることからも、デザインKPIツリーには頻出のパターンです。

この指標の分解は、

MAU
├ 新規MAU
└ 既存MAU

のように新規と既存に分けるのが基本形です。逆に言えば、新規と既存のユーザーを混ぜて考えようとすることはほぼありません。

これにはいくつか理由がありますが、主に、

  1. 事業面から見ると、既存が定着していかないと、新規を大量に獲得し続けなくてはならない。
  2. 価値提供面から見ると、既存はサービスに価値を感じたと仮定でき、新規はまだどちらかわからない。

ということから、別に扱った方が課題分析や打ち手のフォーカスもしやすくなるからです。

また、サービスの特性によって次の図のように別の分け方を挟む場合もあります。

MAU

├ 登録MAU
│ ├ 新規登録MAU
│ └ 既存登録MAU

└ 非登録MAU
├ 新規非登録MAU
└ 既存非登録MAU

課金ユーザーと非課金ユーザーというのもありますね。

また、期間ではなく集客効果だけを見る場合は、

UU
├ 自然流入UU
└ 広告流入UU

のように流入元で分けることもあります。

ここまでの例で気づいた方もいると思いますが、この段階ではまだデザインでアプローチできる比率は出てきていません。

例えば、

MAU
├ 新規MAU
└ 既存MAU
├ 前月既存MAU
└ 継続率

のように更に分解した後でやっと出てきますが、月をまたいだ継続の理由はシンプルではない事が多いので、さらに分解する必要があります。

とは言え、デザイン対象は事前に決まっているはずなので、いつまでも分解し続けなくてはいけないわけではありません。

5–2. 売上の分解

売上についても、ユニークユーザー数と同じように、

売上
├ 新規売上
└ 既存売上

で分けることができます。

また、ユーザー単価を新規と既存で分けなくて良いのであれば、

売上

├ 購入ユーザー
│ ├ ユニークユーザー数
│ └ 購入率

└ ユーザー単価

とすることもできます。

5–3. CVRの分解

CVRは比率なので分解できなさそうですが、すでに紹介した通り、

新規ユーザー登録率

├ 登録フロー ステップ1通過率
├ 登録フロー ステップ2通過率
├ 登録フロー ステップ3通過率
└ 登録フロー 最終ステップ通過率

のように分解できます。

数字が苦手な人達は、CVRは間のCTR全てを掛け合わせると算出できるということを覚えておくだけでも理解が違ってくると思います。これは実際にスプレッドシートなどで計算してみると実感しやすいと思います。

6. 演習問題

基本パターンがわかったところで、応用として案件の要件からデザインKPIツリーを作ってみましょう。

6–1. 演習問題1 LP改善

会員登録を訴求するランディングページ(LP)のCVRが低下してきたため改善したい。

要件

  1. 現在のCVR:10%
  2. 目標のCVR:15%
  3. LPから登録フローへのCTR:12.5%(今回はLPだけの改修なので、登録フローのCTRに直接アプローチすることはできない。)
  4. 登録フロー開始から完了ステップまでのCTR:80%

問題

  1. デザインKPIツリーを作成してください。
  2. どのようなデザイン改善の可能性があるかを書き出してください。

6–2. 演習問題2 登録フロー改善

会員登録を訴求するランディングページ(LP)から遷移してきた登録フローの完了ユーザー数を改善したい。

要件

  1. 現在の登録完了ユーザー数:10,000人
  2. 目標の登録完了ユーザー数:15,000人
  3. 登録フロー開始から完了までステップ数:4

問題

  1. デザインKPIツリーを作成してください。
  2. どのようなデザイン改善の可能性があるかを書き出してください。

6–3. 演習問題3 新規登録+新規購入ユーザーの継続購入率改善

ECサイトの新規登録かつ新規購入したユーザーの翌月も購入する率を改善したい。

要件

  1. 現在の継続購入率:25%
  2. 目標の継続購入率::35%
  3. 登録は購入フローの1ステップとして必須

問題

  1. デザインKPIツリーを作成してください。
  2. どのようなデザイン改善の可能性があるかを書き出してください。

7. 終わりに

デザインKPIツリーは、デザインのゴールと役割を抽象的に捉えるための手法です。 愛を持ったデザインをしつつ、感情だけではない視点も持つということが、デザイナーにとっても武器になるはずで す。

そして、実はデザインKPIツリーの

ユーザー → 行動の理由(デザイン) → 行動 → 結果

という考え方は、UXデザインで言うところの「予期的UX」を利用したデザインということに他なりません。

予期的UXによるデザインをされている方であれば、デザインKPIツリーによって定性と定量の両面が統合されたデザインを進めることも難しくないと思います。

このドキュメントが、みなさんがより良いデザインを生み出す助けになれば幸いです。

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