『UX戦略』は事業にUXを組み込みたい人向けの良書だった。

Mikihiro Fujii
6 min readMay 24, 2016

さんから『UX戦略』をいただいたのをFacebookで報告したら、本人にまでまとめを要求されてしまいました。

発売日前日ということで、まとめまではいきませんが感想を書いておきます。

(ざっと読んだ所感なので、間違いなどありましたらご容赦!)

『UX戦略』はどんな本?

UXデザインの手法を使いつつコンパクトに価値の仮説を検証しながらビジネスに落とし込んでいく考え方と方法について書かれている。
UX戦略の基本要素は下記の4つ

  1. ビジネス戦略:TK
  2. 価値の革新:TK
  3. 検証のためのユーザー調査:TK
  4. 革新的UXデザイン:TK

なぜ「UX戦略」が必要なの?

収益構造のロジックがあっても実際にユーザーにとって価値があるものでなければ成立しない。ユーザーへの価値提供をビジネス戦略の上に「乗せる」のではなく「組み込む」ことが事業づくりにとって必要だから。

どうやって「ビジネス戦略」に価値提供を組み込むの?

リーンスタートアップの思考法と手法に加えてUXデザインの手法を利用する。

なにがわかる本?

リーンなプロダクト/マーケットフィットの実現にUXデザイン手法を利用するための考え方。

  • リーンスタートアップの基本的な考え方。
  • UXデザイン手法の事業への組み込み方。
  • 著者のツール:競合調査ツールやファネルマトリックスなど。
  • 「UX戦略」の概念と、著者の手法はイコールでは無いこと。(そう伝えようとしているのは非常に好感が持てる。)

各章の内容は?

  • 1章 UX戦略とは何か:デザインじゃない。戦略。
  • 2章 UX戦略の4つの基本要素:ビジネス戦略の成功のためには価値の革新が必要だが、それには仮説検証のためのユーザー調査とミクロにとどまりがちなUXデザインを革新的UXデザインに昇華させることも必要。
  • 3章 バリュープロポジションの検証UX戦略の定義:暫定的な仮説設定
  • 4章 競合調査:ビジネス+UX視点での競合調査
  • 5章 競合分析:ビジネス+UX視点での競合分析
  • 6章 バリューイノベーションのストーリーボードへの展開:UVP特定とストーリー化
  • 7章 実験用プロトタイプの作成:MVPを中心としたLEANな仮説検証
  • 8章 ゲリラユーザー調査の実施:ゲリラユーザー調査による仮説検証
  • 9章 顧客獲得のためのデザイン:Growth Hack的ユーザー開発×UX
  • 10章 UX戦略家たち:多様なUX戦略のかたち
  • 11章 結び目をほどく:著者の思い

(ちなみに下のような図を作ってから読みました。)

『UX戦略』UX戦略の基本要素と各章の関係

誰向け?

戦略とデザインは違うので、UXデザインについて学びたい人向けではない。

  • UXデザインを担当していて、事業やリーンへの組み込み方を学びたい人。
  • リーンスタートアップとUXに興味あるけどまだ勉強してない事業系の人。(スタートアップとか)

ただし、ほぼ0→1の内容なので、1→10や10→100は自分で考える必要有りです。

個人的に学びはあった?

あった。(※でも考え方が似てて「大発見!」はなかったです。)

  • 理由0:実はあんまりUX系の本読んでなかったりするから。
  • 理由1:競合調査/分析の具体的な方法がUXとつながる流れで書いてあるのが助かる。
  • 理由2:ツールとその作り方

ど真ん中の業種は?

デザインコンサル

  • 理由0:著者がそういう会社の代表。
  • 理由1:クライアントへのアプローチ方法が書かれている。
  • 理由2:新規サービスの立ち上げの設計手法がメインで、成果の言及が無い(あったらごめんなさい)
  • 理由3:顧客開発がAcquisition寄り。

事業会社(サービス提供側インハウス)で活かせる?

活かせる。

・理由0:ビジネスとUXをつなげる考え方について書いてあるから。
・理由1:事業会社でもサービス立ち上げフェイズはあるし、サービス内の新機能でも使えるはず。
・理由2:全体的にデザインバックグラウンドのUXデザイナーが弱い部分が補完されている。
・理由3:リーンとUXそれぞれに対して『Lean UX』より正統派なので、統合のイメージを持つにはいいかも。
・理由4:具体的なツールが紹介されているので、すぐにでも使える。

わからないことは?

バリュープロポジション中心の分野に留まるのでUX全体を理解することはできないし、リリースした後具体的にどうすればいいかはわからない。

不満はある?

ある。個人史は講演では面白いだろうけど、本だとサービスの事例の方がありがたい。

結局「買い」なの?

事業成果へのデザイン組み込みを標榜している自分的には「買い」(買う予定だった)。
体系的にまとめられているので、自分の体系を組み立てるのに参考になるのと、自分の弱点を埋める視点やツール群がうれしい。
事業ベースへのUX組み込みなので、UXデザインベースで買うと爆死するか脱皮するかの2択な気がします。
購入を検討されている方で、内容について質問がある方は、Mediumのコメントなどでお気軽にどうぞ!

まとめ

UXってつけた方が売れるけど、UXってつけない方が本質的な事業成果を出すことを目的としていることが伝わる本だなと思いました。(ほめ言葉)

この本を検討されている方は、事業×UXに対して問題意識やモチベーションがある方だと思うので、読まれた方々が爆死せず脱皮することを願っています。一緒に脱皮しましょう!

本日(2016/05/25) 発売されました! → Amazonの『UX戦略』ページ

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