なぜUXデザインは事業で必要とされるのか

Mikihiro Fujii
6 min readFeb 12, 2017

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このサイクルにはどんな体験が必要だろう?

2017年2月15日に開催される「UX JAM & UX Sketch 」にパネルとして登壇するので、事前にいただいたテーマの中から「(UX)デザイナーとは?」「ビジネスとデザイン、どちらが大事?」の2つのトピックについて、自分の考えをまとめておきます。

(UX)デザイナーとは?

これについては「事業におけるUXデザインとは?」を定義して、答えにしたいと思います。

仮説コンセンサスのためのモデル化

事業においては、ゴールに向かって経営資源やメンバーの人生を賭けるに足りる「仮説のコンセンサス」をつくる必要があります。

コンセンサスのための方法は、天才社長のコンセプト・マーケットリサーチ結果・新発見の理論・俺達の想い!など、なんでも構いませんが、複雑な仕組みや概念をシンプルに捉えるための方法として「(概念)モデル」があります。

例えば「ビジネスモデル」だと

圧倒的な質の検索サービスによってネット利用人口に等しいユーザー数を獲得し、その人達にアクションして欲しいクライアントをマッチさせて広告収入を得る

というような感じ。

「モデル」とは何かというと、「モデル化」して考えるとはどういうことか? | GLOBIS 知見録によると、

「物事の仕組みを単純化して表したもの」

ということです。

何かを説明する時に図やグラフや比喩表現なんかを使っている時は、「モデル化」していると言えるでしょう。

ユーザー領域のモデル化

事業をビジネス・システム・ユーザーの3つの領域に分けた場合、ビジネスとシステムのモデル化手法は発達しているので、複雑な構造もモデルを通じて把握・検討することが可能です。

ですが、ユーザーに関しては、「F1層」とか「AISAS」といった一般論のモデルに留まって他の領域と同じようには扱えず、「何をつくれば良いのか。」が個人の頭の中にしかなかったり、みんなでバラバラの事を考えていたりしていました。

そういった状況の中で、先達の研鑽により発達してきたUXデザインが、複雑多様化する事業のユーザー領域の優秀なモデル化手法として利用されることになったのだと僕は考えています。

UXデザインによって、ユーザー(の性質や行動)について深掘りをした上でモデル化することが可能になり、結果として全体的なモデルのデザインができるようになったのは実感があるのではないかと思います。
(もちろん、個別にモデル化しなくても、例えば「リーンキャンバス」のようなツールでも全体的にデザインできる思います。)

チームのマインドセット

もう一つ、僕個人としては、UXデザインの根底に流れる共感やモラル、言うなれば「ユーザーを数字ではなく人として捉える」ことをチームに導入するためにも使っています。
これは事業の基盤となる組織デザインの方法でもありますが、モデル化の手法としてのみ使うと悪に陥るリスクが高く、それが僕のアイデンティティに反しているという個人的な理由もあります。

UXデザイナーの役割

このように、事業の設計に対してユーザー領域の要素を組み込むのが、UXデザイナーの役割であり、その人の扱える「事業」のレイヤーによって役割範囲が変化すると考えています。

僕個人としては、こういった解釈のもと「デザイナー」の役割の一つとしてユーザー領域を捉え、UXデザインを利用しています。

ビジネスとデザイン、どちらが大事?

この2つは、そもそも対立するものではない思っていますし、どちらも定義が曖昧すぎるので、定義を確かめながら考えを書きます。

対立ではなくサイクル

僕はモノづくりのゴールはつくり手から見て4つに分けられると考えていて、そのゴールのサイクルは下図のようになっています。

モノづくりのゴールを実現させるフレームワークより

この図を元にして、
1. 「サイクル全体=ビジネス」と「モノ=デザイン」
2. 「存続可能性=ビジネス」と「モノ→ユーザーの体験=デザイン」
のような定義のパターンで考えても、サイクルである以上その都度のウェイト配分と順番でしかないことがわかると思います。

事業の現場での役割

ネット系のサービスの場合、広告やフリーミアム(タダで使ってもらって気に入ったら課金)などのビジネスモデルが一般的になっているので、まず「ユーザーへの価値提供=デザイン」を確立させられるかどうかを考えたいという要求からUXデザイン領域強化のトレンドがあるのだと思います。

また、僕はあくまで事業の中の要素として捉えるべきだと考えているので、現場ではUXデザイン的な手法を使う前にKPIツリーをつくるようにしています。
KGI、KPIの違いを解説!KPIツリーの例も! | Growth Hack Journal

まとめ

今回の登壇という機会をいただいて、自分の考えをまとめることができました。 松川(

)さんありがとうございました。
当日、 伊野()さんや新明()さんからは、別の切り口でのお話が聞けると思うので楽しみです。

このあたりの話は、「こういうものだよね」という共通の理解をつくって、もっと先の話に集中したいです。いきなり業界全体なんて無理なので、まずは自分の周りからでも。
社内で共通理解に至れない場合とかは、呼んでもらえたらご相談に乗ります。対価は求めないというか、業界全体でもっと良いものづくりができるようになって欲しいので、その実現が対価です。

もちろん、この記事に書いてあるような考え方で一緒にデザインしていきたいという方のザッパラスへのジョインもお待ちしています。ご興味ある方はご連絡ください。

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