モノづくりのゴールを実現させるフレームワーク — 基本編 -

Mikihiro Fujii
6 min readNov 24, 2014

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Alan CooperGoal Directed Designというコンセプトにインスパイアされて以来、僕のテーマは、「いかにしてゴールに向かい、実現するのか」になりました。

モノづくりのプロジェクトは混乱しやすいものです。
チームは何を優先して良いのかわからなくなりますし、時には何をつくるべきなのかさえわからなくなります。そして、その理由はほとんどの場合、ゴールを見失っているからです。

もし「自分はそうでもない」と思うなら、
本当に何が重要なのか深く考えていないか、自分なりの方法や能力を身につけているかのどちらかでしょう。

「モノづくり」という場において、そういった混乱や誤解、逆にそれを乗り越え、ゴールに向かう能力とはどのようなものなのでしょうか?。

混乱の理由を2つに絞るところからはじめ、克服とゴールへの道筋をみつけたいと思います。

混乱の理由1. モノづくりプロジェクトのゴールは複数ある

メンバーにとっても、プロジェクト自体にとっても、モノづくりにおいて最低限で捉えなくてはならないゴールは下図のように4種類あります。

  1. モノ:プロジェクトでつくる成果物。例:製品、サービス、機能、UIなど
  2. ユーザーの体験:ユーザーが認識する出来事・感覚・価値。例:期待。「これに6,400円なら払える」「楽しい!」「また来たい!」など
  3. ユーザーの行動:プロジェクトでつくられたモノの利用行動。例: 購入、(利用するための)移動、継続利用など
  4. 存続可能性:プロジェクトが存続するための条件。例:予算達成、問題解決など。

まず、ゴールが複数あることが混乱の1つ目の原因です。主観によって「当然これがゴールである。」というものが違うから話が噛みあわないのです。

この4つを自分の優先順位順に並べるとどうなるでしょうか?ちょっと考えて書き出してみてください。
僕の優先順位は、ユーザーの体験 > 存続可能性 > ユーザーの行動 > モノです。

混乱の理由2. ゴールはひとつのサイクル

実はこの4つのゴールは、1つのサイクルになっています。
どの要素が欠けてもプロジェクトはうまくいきません。

ここまで読んで、「これは当たり前のことを書いてるだけじゃない?」と思われる方も多いと思います。僕自身、自分が発見したことが当たり前すぎて不安に思いました。

でも、いろんな人と話してみて、4つのゴール全てを一つのものとして捉えることは難しいことなのだと気づきました。

ふだん俯瞰的に事業を見ている事業責任者がプロダクトのデザインを突き詰めることは少ないですし、多くのデザイナーは事業全体と自分のアウトプットの関係をうまく捉えることができません。(例外として有名なのはジョブズですね。)

全体観や関係性を把握するために先ほどの図のゴールを矢印でつなぎました。

例えばモノから始めると、モノが体験を生み、それによってユーザーが行動し、事業が存続できるという因果のサイクルが見えてきます。

逆に、モノをつくるためには存続可能性が必要だし、ユーザーが行動がしてくれないと存続はできません。そして、行動をしてもらうためにはモノを通じてユーザーに何かを体験してもらう必要があります。

このサイクルの回転自体をゴールとして認識することができないことが、混乱の2つ目の原因です。「どれをゴールにするのが正しいのか」という議論は「ニワトリとたまご」の結論を出そうとするようなものです。

ゴールの例

理解を深めるために、ゴールの例を書きます。(実際にはもっと具体的に捉える必要があります。)

東京ディズニーランドの例
モノ:広告。TDLそのもの。アトラクション。イベント。キャスト。
ユーザーの体験:楽しそう!6,400円なら払える!楽しい!また来たい!
ユーザーの行動:イベント紹介ページ閲覧。チケット購入。TDL内での飲食・グッズ購入。再訪。
存続可能性:予算達成。

リワードアプリの例
モノ:広告。アプリそのもの。定常的に獲得可能なリワード。
ユーザーの体験:無課金でゲームできそう。無課金でアイテム買えた。これなら続けても良さそう。
ユーザーの行動:アプリインストール。Push Notificationの許可。案件消化。継続利用。
存続可能性:予算達成。

資金調達をしたいスタートアップの例
モノ:スライド。プロトタイプ。ピッチ。
ユーザーの体験:投資する価値がありそう。
ユーザーの行動:投資。ミーティングへの参加。
存続可能性:目標の資金調達。

サイクル全体のデザインをしよう。

つくったモノが心を動かし、人々を行動させて事業を成立させ、またモノをつくることを可能にする。

このサイクル全体をデザインするというゴールを持っていない時、チームは混乱し、メンバーは自分が何をつくるべきなのか見えなくなるのです。サイクルのあるゴールの必要条件の一部は他のゴールに依存しているからです。

時計のムーブメントが、動力と直接つながった歯車から針を直接動かす歯車まで、すべての大きさや速度が相互に依存し合っているのと似ています。

最低限考えなくてはならない4つのゴールすべてを意識しながらサイクル全体をデザインすれば、ゴールに向かい実現する考え方や、混乱が起きたとしてもその理由を把握し、乗り越え方を見つける考え方がわかるようになります。

まとめ

モノづくりプロジェクトがゴールを見失って混乱するのは、「モノ」「ユーザーの体験」「ユーザーの行動」「存続可能性」の4つのゴールを認識することや、4つがつながったサイクル全体の成立をプロジェクトのゴールとして捉えることが難しいからです。

そこで4つのゴールのサイクル全体を捉える方法が必要になってきます。今後、その一つである4つのゴールのフレームワークについて実践方法などを説明していきます。

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