僕が予期的UXにフォーカスする理由

Mikihiro Fujii
7 min readApr 8, 2016

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この記事は専門用語がいくつか出てくるためわかりにくい場合もあると思います。そんな方のために一般的な用語に限ったバージョンも書きましたので、よろしければお読みください。

世の中はすさまじいスピードで変化し続け、僕の環境も変わったりしていますが、あいも変わらずモノづくりのゴールのサイクルのことばかり考えています。

モノづくりの4つのゴール

ひと目見れば誰でもわかることですが、サイクルであるということは、「循環」していることと「等価」であることを示しています。

そして、まったく当たり前のことですが、4つのゴールの考え方としては、「ユーザーの行動」を生み出すものは、「ユーザーの体験」です。

(僕自身は必ずしもこの「ユーザーの体験」がいわゆる「UX」と同じものであるかどうかは判断していません。)

それを前提として考えを深めた結果、僕はまず予期的UXにフォーカスするという考え方に至ったので、その理由としての経緯を書き留めておこうと思います。

ユーザー体験の時間区分

そのいわゆるUXには、「Time spans of user USERexperience」という概念が「 EXPERIENCE WHITE PAPER」にて提唱されています。

これは「ユーザー体験の時間区分」といったようなもので、UXを時間の流れに沿って「予期的UX」「一時的UX」「エピソード的UX」「累積的UX」に分けて捉えるという考え方です。(日本語翻訳版では、「ユーザエクスペリエンスの期間」と訳されています。)

この時間区分は図解されており、日本語翻訳版では下のようになっています。

図1:『UX白書』ユーザエクスペリエンスの期間 by hcdvalue

行動につながるUXとは?

では、ある行動をユーザーにしてもらいたい時、どのUXについて考えれば良いでしょうか?

これまで僕は、良質なストーリーがユーザーの行動につながるのであり、予期や一時は方法として使いつつも、エピソードや累積をゴールとして捉えていました。

ですが、前々からのテーマではあったものの、今回(2015年11月)の転職で「行動につながるユーザー体験」に向き合っている中で、そこに大きな間違いがあることに気づいたのです。

考え方としては簡単です。

「ユーザー行動につながる」という課題には、「ユーザーはまだ行動していない」という前提があります。

そして、ユーザーの行動は時間区分の図のどこに位置するのかを示したのが下の図です。

図2:ユーザーの行動はユーザー体験の時間区分のどこに位置するか

予期的UXと一時的UXの間ということになります。

つまり、「予期的UXのみがユーザーの行動に対して直接的な影響を与えられる。」ということです。

その他のUXと行動の関係

では、他のUXはユーザーの行動に対してどのような意味を持っているのでしょうか?

前項までのような前提で、あらためて時間区分の図を眺めていた時、僕は自分の誤認識に気づきました。

それは下図で赤色にした線についてです。

図3:予期的UXをつくるUX

気づくまでは、全部のUXがつながってんのねー、くらいに捉えていたんですが、ちゃんと見れば、赤い矢印が予期的UXにのみに向かっていることに気づくと思います。

つまり、「予期的UXのみが、予期的UX自体も含めた全UXの影響を直接受ける。」特殊な区分なのだということになります。

ただし、これは予期的UXのみが極度に重要度が高いという意味ではなく、目的に応じて使い分けるということです。

それは、「ユーザー体験の時間区分」がサイクルになっているからです。

つまり、冒頭で書いた、”ひと目見れば誰でもわかることですが、サイクルであるということは、「循環」していることと「等価」であることを示しています。”という基本的なことを僕自身も見逃していたのです。

行動を生み出すには、予期的UXにフォーカスしてデザインする

以上でわかったことは、(サイクルはさておき)

  1. 予期的UXのみがユーザーの行動に対して直接的な影響を与えられる。
  2. 予期的UXのみが、予期的UX自体も含めた全UXの影響を直接受ける。

の2点でした。

この気づきと4つのゴールのサイクルから僕が至ったのは、「ユーザーの行動を生み出すことがゴールである場合、まずは予期的UXにフォーカスしてデザインするべきだ。」ということです。
この場合の行動には、クリックやコンバージョンだけでなくリテンションなどサービスとして必要なすべての行動が含まれます。これらの行動がゴールである場合というのは、最初からハードルが高いとわかっている、リリースしたらユーザーが価値に到達する前に離脱している、もしくはMVPで検証している時など様々です。

より具体的に4つのステップで表すと、

  1. 生み出したいユーザーの行動を特定する。(KPI設計)
  2. その行動を生む予期的UXの仮説を立てる。(UXデザイン リサーチ→価値仮説フェイズ)
  3. その予期的UXを生むために必要な「予期的」「一時的」「エピソード的」「累積的」なUXの仮説を立てる。(UXデザイン 設計フェイズ)
  4. それらのUXを生むために必要なモノの仮説を立て、提供する。(プロダクトづくり)

ということになります。

いかがでしょうか?いくら行動してもらいたいと思っていても、エピソードや累積的UXにフォーカスしてしまいがちですが、行動してもらえないことが課題になっている場合(リテンション!!)などは、切り替えてみるのも良いかと思います。

この考え方がみなさんのデザインの参考になればうれしいですし、僕の説明がわかりにくという方は、ぜんぜん違うぞ!と思われる方とはぜひ話したいので、お声がけください。

最後に謝らせていただくと、何度となく見ていたのにサイクルであると認識できておらず、もしエピソード的UX偏重な僕の意見を聞かれた方がおられたら間違いでした。ごめんなさい。(価値を生み出すという意味でした。)

精進しつつ、この間違いの発見から行き着いた「行動につながる予期的UXデザイン」の手法について、今後公開していこうと考えていますのでご容赦ください。

この記事の続編は、「行動を設計するなら予期的UXにフォーカスしよう」です。

追記:マニアックな自分の喜びを書いておくと、「ユーザーがなぜ行動してくれないのかという課題は”一次的には”予期的UXの話でしかない。」という発見がアツかったというところです。これみんなわかってたこと?

※ユーザー体験の時間区分の図の改変版についてはクリエイティブ・コモンズ 表示 — 非営利 — 継承 3.0 非移植 ライセンスの下に提供されています。

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Mikihiro Fujii
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Written by Mikihiro Fujii

デザインコンサルタント / Designer

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